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登山とスポーツ

最近、高くても1200m位の「低山」と呼ばれる山ばかりだけど近隣の山に登ったりしている。で、「登山」ネタです。
「登山不適格者」(日本放送出版協会 岩崎元朗著 電子書籍版)という本があります。この本の第一章に「登山はスポーツか」という節があって、副題が「"価値"よりも"勝ち"を求める強者たち」なので、著者の書きたい事は容易に察せられます。実際に、"登山はスポーツである、とされている"、と最初に認めていますが、続けて"山に登る工程は、スポーツというよりも、むしろ「文学的」"という。また、「山は哲」とも書いてあります。"文学的"であり"哲学的"でありスポーツでは無いという主張です。また、検索すると、「登山はスポーツ」だと明確に記しているサイトも多いけど、スポーツでないという意見も多いようです。曰く、「趣味だから」「冒険だから」「宗教的なものが元だから」などなど意見がありますが、

「登山は、人と勝ち負けを争ったり、記録の更新を競うものでない」

という考え方が共通しており、「スポーツ=勝負・記録更新」という認識が根本にあるようです。先の本の著者による"文学的"という表現にもあるように、登山とは何か"私的"なものであって、人と競うあう行為ではない、ということでしょう。

では、「スポーツ」とは何かが問題となります。Wikipediaによると

「スポーツとは、一定のルールに則って営まれる、遊戯・競争・肉体鍛錬の要素を含む、身体を使った行為である。」スポーツ - Wikipedia

とあります。Wikipediaの記述は信頼性に問題があるというか、保証がないので、そのまま鵜呑みには出来ないけど、これを信じれば、スポーツとは何らかのルールがある身体行為であって、勝負とか記録は必須では無い事になります("遊戯・競争・肉体鍛錬"はandでなくorであり、必須要素でもないことに注意)。ですので、明らかに「登山」は「スポーツ」となります。
いやいや、登山には野球や、テニスやその他、世の競技スポーツに見られるようなルールは無い。と、言われるかもしれませんが、明らかにルールがあります。「登山の前に山行計画を提出する」とか「登山道は上り優先」とか「自然保護のため登山道以外歩行禁止」「登山道では挨拶する」等々、競技のためのルールでは無いですし、ルールというよりマナーに近いものも多いですが、登山という行為を人間社会の中で円滑に存続させるために「登山のルールがある」のは共通認識でしょう。逆に言うと、登山はルールとマナーが未分化な前近代的なスポーツと言えるかも知れない。私の個人的な考えではありますが。
今までの議論に納得できない方も多いでしょうが、例えば「ランニング」という運動を考えてみましょう。この運動がスポーツかという問いに対して、多くの人はスポーツと答えると思います。しかし、ランナーの多くは家の近所などを健康のためやダイエットやトレーニングのために走っているだけで、特に競争のために走ってはいません。厳密なルールも特にあるわけではありません。日常生活の常識的なマナーが必要なだけです。あえて言えば、道路交通法でしょうか。
確かに、このランニングの延長線上に、10kmやハーフマラソンフルマラソンというレースがあるかも知れませんが、それが目標であるかどうかは人それぞれで、目標は個々に有り、"私的"な行為です。"文学的"かどうかは分かりませんが。
この図式は登山と同じです。でも、ランニングはスポーツですが、登山は違うという意見が登山界にはあるのです。不思議な世界です。